有難う御座います、ようこそお参り下さいました、当庵(ブログ)住職の真観です。
以前、「サチのお寺ごはんの感想」という表題にて、真宗本廟(東本願寺)の「真宗教化センターしんらん交流館」に、東本願寺文庫という図書室のような場所があるとお伝え致しました。
過去の記事では「サチのお寺ごはん」を読んだとお伝え致しましたが、東本願寺文庫には人気漫画「鬼灯の冷徹」も揃っております。
実は私、鬼灯の冷徹は東本願寺文庫で出会い、ある分は全てここで読みました。
1巻から20巻以上を零から揃えるのはお金もかかるし難儀しますし、大変有り難く使わせて頂いております。
鬼灯の冷徹はアニメーション版もあるらしく、残念ながら放送終了後に知った作品だから、アニメ版は知りません。
そこで、どんなものかちょっと調べて観たのですが、鬼灯の冷徹アニメ版OP(オープニングテーマ)である「地獄の沙汰も君次第の歌詞」に注目致しました。
「地獄の沙汰も君次第」という題名が言い得て妙
鬼灯の冷徹のアニメ版OPテーマ「地獄の沙汰も君次第」は、MP3形式で販売されている音楽コンテンツやCDを購入しておりませんから、全部は聞いた事がありません。口コミなり評判を調べて観ると、結構早口で声優さん達が歌っているらしく、声優の本気の早口歌唱が凄いらしいですがね。
私が注目したのはそこではなく、「地獄の沙汰は君次第」という主題歌の題名そのものが言い得て妙だなあ、と感じたところにあります。
恐らくこの主題歌の題名は、「地獄の沙汰も金次第」を元にしているとお見受け致しますが、「地獄の沙汰も君次第」というのは、まさにその通りです。
ここで、少し言葉の勉強をば。
「沙汰(さた)」というのは、
:裁判、判決、物事の判別
:音信や決定事項の通知
:話題や事件
という意味の言葉です。
「地獄の沙汰」というのは、地獄での裁判や判決、現世での行いをどのように判別されるか、ということです。
更に詳しく言うならば「地獄の沙汰も現世の君次第」といったところでしょうか。
地獄での裁判は、現世の行いに照らし合わせて行われるものです。
現世の行い次第、つまり「地獄の沙汰は君次第」というのは、まさに言い得て妙でしょう。
そして、「沙汰」というのが地獄とも関係があるという事は、地獄の様相をよくご存じの方でしたら、ピンとこられたやもしれません。
地獄には、閻魔大王がよく知られている地獄の裁判官でありますが、閻魔大王を含む住人の地獄で裁判をする大王を「十王(じゅうおう)」と言います。
この辺り、恵心僧都・源信和尚の「往生要集」にも記されております。
地獄の裁判官として、最も知名度が高い閻魔大王は、五七日、つまり地獄に行ってから35日目の裁判官です。
このような事情から、私は「地獄の沙汰も君次第」という、鬼灯の冷徹のOP(オープニングテーマ)は、題名が絶妙だと思うた次第であります。
地獄の沙汰、つまり地獄での裁判について、この一言で表しているわけですからね。
地獄の沙汰も君次第の歌詞は、浄土系の仏教や往生要集を学ぶきっかけに
地獄の沙汰も君次第の歌詞も、日本の地獄という概念、更には浄土系の仏教や源信和尚の「往生要集」を学ぶきっかけにもなり得ると思った次第であります。地獄の沙汰も君次第の歌詞を調べて観ると、日本の地獄について網羅する形で歌詞が構成されています。
歌詞そのものは、日本の地獄・仏教における地獄について、等活地獄や衆合地獄など、各地獄を羅列しているだけではあります。
でも、メジャーどころと言うと変な言い方に思えますが、地獄という概念を調べたりする入り口としては、なかなか使えるなあ、と思いました。
日本の地獄、とりわけ仏教的な地獄の様相や概念を語る上で、源信和尚と「往生要集」は外せません。
往生要集と恵心僧都・源信和尚については、最近はこのような本もあり、大変有り難く学ぶ機会を頂いております。
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鬼灯の冷徹を東本願寺文庫で読んだとき、作者の江口夏実さんは、仏教に深い興味をお持ちで、往生要集の解説書を読まれてよく勉強されているのかな、と感じたものです。
江口夏実さんは、水木しげるさんの事を尊敬していると言う事も、鬼灯の冷徹という漫画を書き始めたきっかけだとは思いますがね。
鬼灯の冷徹も、アニメ主題歌である「地獄の沙汰も君次第」の歌詞も、地獄や往生要集、そこから浄土仏教を学ぶきっかけに大いに役立つと私は観ております。
純粋にギャグパートやキャラクターの掛け合いを楽しむのも良いのですが、一歩進めた読み方をしてみるのも、乙なものだと思いますが、如何でしょうか。
鬼灯の冷徹と地獄の沙汰も君次第に関連する京都のお寺
今回の、鬼灯の冷徹で使われているオープニングテーマ「地獄の沙汰も君次第」と、関連のあるお寺が御座います。そこには、閻魔大王と閻魔大王の補佐官も勤めたことがあると言う伝説を持つ、小野篁氏の像が祀られているお寺であり、テレビ番組でもちょくちょくと放送されているお寺です。
そのお寺は「六道珍皇寺」と申しまして、「歴史秘話ヒストリア」や「所さんのニッポンの出番」でも、放送されてご存じの方もいらっしゃるやもしれません。
参照:「六道珍皇寺の井戸と地獄の話」
六道珍皇寺には「冥土通いの井戸」と呼ばれる井戸があり、そこから小野篁氏は、地獄へ通って閻魔大王の補佐官をやっていた、という伝説です。
ちなみに、この話は「鬼灯の冷徹」本編でも取り上げられております。
現在は臨済宗のお寺であり、仏事も行われておりますから、京都へ立ち寄られた際に、興味があれば覗いて見ると宜しいかと存じます。

鬼灯の冷徹と地獄の沙汰も君次第を学んで改めて思う事
「往生要集」は、極楽・浄土へはどのようにしていけるのか、ということを記してありますから、本来は地獄辞典ではないはずなのですがね。ただ、あまりに事細かに地獄の様子や、どのような罪を犯せばどの地獄に堕ちるかという事を克明にかかれているために、地獄辞典的な要素もあるのは確かです。
私個人としては、このような地獄の存在有無は断言は致しませんが、有ると考えていた方が謙虚で悪事を為さぬ戒めとなるために「地獄はあると思うようにしている」と言う立ち位置におります。
「地獄ってあるの?」と尋ねられたら、私は正直に「あるかないかはわかりません。」と応えます。
でも、あると思って生きた方が、仏教の「七仏通誡偈(しちぶつつうかいげ・一切の罪を犯さず善行を積む事)」という教えの実践を助けてくれると思います。
地獄という概念を持っておくことは、悪いことをせず善行を積む事に繋がりますから、鬼灯の冷徹とOPテーマの「地獄の沙汰も君次第」は、学べる漫画やアニメ、そして歌だと私は感じます。
尚、東本願寺で読める仏教関連の漫画に、こちらも御座います。
参照:「サチのお寺ごはんの感想」
参照2:「サチのお寺ごはん2巻の読書感想。レシピも仏教の話も学べる内容」
また、今回お伝え致しました、「往生要集」を書かれた源信和尚の本、その名も「源信 日本人のこころの言葉」も、東本願寺に御座いました。
鬼灯の冷徹と源信和尚と、往生要集を同時に学べる、なんとも有り難い浄土仏教の図書室であろうかと、改めて有り難く使わせて頂いている今日この頃に御座います。
合掌