引き寄せるより寄り添い寄り合う

有難う御座います、ようこそお参り下さいました、当庵(ブログ)住職の真観です。

あなたは、「引き寄せる」という言葉を聞くと、何を連想されるでしょうか。
020094 物を引き寄せるというと、上の画像のように、自分の方に持ってくる、移動させることを連想されるかと思います。

ただし、上の画像のような、箸で食器を引き寄せると言う事は、作法としても実利の面でもやってはいけませんから、ご注意をば。



引き寄せるというと、自己啓発系に詳しい人や嵌まっている人は「引き寄せの法則」を連想されるところでありましょうか。

このブログ(お堂)でも、たびたび引き寄せの法則について、お伝えしております。

最も、引き寄せの法則を推奨しているのでは無く、毒されぬための戒めや、在家仏教者が仏教視点で見る危険性についてなど、水を差すような話ばかりですが。

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「引き寄せる」のは自分都合で傲慢な気配を感じる

引き寄せの法則とは、大体が「自分の成功した未来」を引き寄せる事が目的としてある概念や、成功法則の手法であるというニュアンス(語感)が御座います。

要約すれば「自分都合の未来を引き寄せる」という気配がありです。



人は自分が可愛いものであり、自分都合の未来を願うのは、今昔問わずに人が持つ煩悩であり性でありましょう。

もちろん、私にも御座います。

毎日の勤行にて、その燃えさかる煩悩を仏法や六時名号に照らして頂き、毎日己がいかに煩悩燃えさかる煩悩具足の凡夫であるか、思い知らせて頂く次第であります。



これはあくまで私個別の感性ではありますが、引き寄せの法則という言葉自体に、ある種の傲慢さを感じ取る事には、このような背景があるのです。

「引き寄せる」という言葉と概念に、「自分に引き寄せる」「自分が欲している物を、自分都合で引き寄せる」という姿が観えるために、傲慢さを見出しておるわけで御座います。
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他人を押しのけてまで引き寄せる愚行を戒めるべし

引き寄せの法則の体験談等を読んでみると、大体がお金やら仕事やらの、自己の成功した未来を引き寄せよたという事が書かれております。

「引き寄せの法則のお陰で、お金を引き寄せました」というような引き寄せる体験談を読むと、霊感商法的な部分を見出すところであります。

幸運を引き寄せるブレスレッドや壷、幸せを引き寄せる財布など、今でもあるというのは、それだけ売れているということなのでありましょう。

幸運を引き寄せる財布などを、科学的に効果を検証して実証して貰いたいものです。



幸運を引き寄せる財布や壷はさておき、引き寄せの法則による成功体験談は、大体が自分都合の願望なり煩悩を満たしたという話が多く観られます。

それはそれで、その人が幸せを感じているならば結構な事もあるでしょうが、問題は「引き寄せ方」です。



その幸福が、他人を押しのけての「幸運を引き寄せる事」であるならば、私は我利我利亡者の所業である、そのような見方をしております。



例えば、よく漫画やアニメなどに出てくるバーゲンセールのシーンがありますが、あれは「我利のために自分都合でバーゲン品を奪い合う餓鬼畜生の地獄での争い」です。

押し合いへし合い、他人を押しのけて我利を観たそうとする姿は、本人は必死で気づいていないでしょうが、端から見るとみすぼらしいものであります。

それに気がついていないからこそ、愚かなる我利我利亡者であるのですがね。



引き寄せの法則に頼って、自分が引き寄せたい事柄をどのように引き寄せるのか、その姿や在り方を問う事が大切です。

特に、引き寄せの法則で何かを引き寄せる事に成功した、と錯覚したタイミングは要注意です。

引き寄せの法則を盲信し、それで周りが見えなくなり、他人を押しのけてまで自分都合の未来を引き寄せる我利我利亡者にならぬように、戒める自己観察が必要でありましょう。
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引き寄せるよりも「寄り添う」事を意識する

私の語感では、引き寄せの法則とか、引き寄せるという言葉に、どうも傲慢な響やニュアンス(語感)も聞こえてきます。

もちろん、物理的に物を引き寄せる事はありますから、その限りではありませんが。

ただ、自分都合の未来を引き寄せたり、他人の好意を引き寄せたりするという使われ方がする風潮が、現在の「引き寄せの法則手法」には観られるような気がするのです。

場合によっては、強引に引っ張って、自分都合の未来や物事の完結を引き寄せるという、他者を省みない事もあります。



私は、そのような自分都合の引き寄せ行為を、何とか戒めつつ適切な距離を保てる概念や方法はないかと思案していたところ、私の体験からもこのような事が効くし、仏教的であろうと思う事が御座います。



それは、
:寄り添う
ということです。



「寄り添う」という言葉の響きと在り方は、「引き寄せる」よりも、私は優しさや「慈悲(じひ)」の雰囲気を味わえると思うのですが、如何でしょうか。



寄り添うという事について、私はこのような経験をしたことがあります。

お坊さんは仏法を説くこともしばしばありますが、本当に苦しんでいる人には、あれこれごちゃごちゃと言わずに、ただそこで寄り添い、共にいて下さるというお坊さんに出会った事が御座います。

私はあるお坊さんに、心療内科にかかる疾患に苦しんでいた時、ただただ寄り添って頂き、救って頂いた経験から、「引き寄せる」のでは無く「寄り添う」事の大切さを体験的に感じております。

仏法をもって説教をされるのではなく、ただただ、私の話をじっと聞いて下さり、寄り添って頂いた経験が、どれほど私を救って下さったことか、今でも頭が下がります。



成功を引き寄せたいという思いなり煩悩は、現代社会において持ってしまう事は仕方の無い事です。
(そもそも「成功」の定義も問題にすべきでしょうが、ここでは省きます。)

それが原動力となって、物事が良き方向へ向かい事も御座いましょう。

しかし、誰かを押しのけた上で、強引に自分都合の結果を「引き寄せる」という事は、我利我利な在り方であります。

詐欺師や詐欺まがいの、ビジネスがどうのこうのと宣っている我利我利亡者に、このような傾向が顕著に見られます。



そうではなく、ご縁を大切にし、ご縁のある人に時には寄り添いながら、自利利他円満な着地点に共に着地する、その上で功徳・現世利益を賜ったならば、有り難く頂く。

このような在り方が、仏教的であり、自分もご縁があった人達も、円満に過ごせるのではないかと、私は頂いております。



引き寄せの法則なり、引き寄せるという概念が、傲慢になったり暴走しないための安全装置として「寄り添う」という言葉と概念、そして在り方は、大切にしていきたいものであります。
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引き寄せるより「寄り合う」そして「寄り合う」がバランス良い

引き寄せの法則は、距離を間違えると強引に物事を引き寄せるという、傲慢な在り方に育ってしまう危険性もあります。

お付き合いするならば、私でしたら強引な人や傲慢な人よりも、そっと寄り添う奥ゆかしい人でありたいと思う、そのような次第で御座います。



もっとも、仏教・特に禅では「両忘(りょうぼう)」「両行(りょうこう)」という言葉があり、「善は急げ」と「急がば回れ」が共存出来るのが日本的でありますし、仏教的な在り方です。

「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」も、同居しておりますね。

ゆえに、「強引に引き寄せるこの人とは付き合いたくない、こっちの易しそうな人とだけ付き合いたい」というのはある種の執着であり煩悩ですから、戒めるところではあります。

しかし、そうは言っても、やっぱり人情としては、強引に物事を引き寄せるよりも、ご縁を大切にして、人に寄り添える在り方の方が好感を持てる、という自覚が御座います。



現代社会では、どうしても競争がつきまといますし、競争社会をいきなり無くすのは難しい事でありましょう。

どうしたって「引き寄せる」という在り方も必要なときもあるやもしれません。

しかし、そこで暴走しないためにも、「寄り添う」という在り方も持つべきでは無いか、私はそのように「引き寄せる」という言葉から、今を生きる姿勢を頂いております。



そういえば、日本には「引き寄せる」「寄り添う」のバランスを取ってくれそうな言葉が御座います。

今は、もう効かれなくなった言葉かも知れませんが、「寄り合い」という言葉です。

「あれ、ねえねえおばあちゃん、おじいちゃんは?」「ああ、おじいちゃんは、町の寄り合いに行ったよ。」と、そんな会話を聞いたことは御座いませんか?



私、この「寄り合い」とか「寄り合う」って、なんだか日本の情緒を感じる、日本的な言葉であると感じております。

そして、それでいて「引き寄せる」ような強引さがなく、かといって「寄り添う」というとなんだかしんみりしたり、受動性の難しさを感じることもありません。

そのようなニュアンス(語感)から、「寄り合う」という在り方は、なんとなくバランスが取れているような、そんな気配を感じます。

それになんだか「寄り合う」って、お互いに寄っていって合おうとする「和合」も感じられます。

和を重んじる感じがするこの「寄り合う」という言葉は、まさに日本的であり、また優しい感じがするところが、互いに敬い助け合うという在家仏教者の生活信条も読み取り感じ取れて、仏教的な感性に響いてきます。



強引に引き寄せて、傲慢になりそうな自己に気づいたら、「寄り合う」という言葉を思い出してみては如何だろうか、そんな事を思う今日この頃に御座います。



合掌

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