有難う御座います、ようこそお参り下さいました、当庵(ブログ)住職の真観です。
中秋の名月には、月見団子や里芋などの食べ物をお供え致します。
中秋の名月にお供えする食べ物と言いますと、丸っこい月見団子と里芋やさつまいもと芋類が代表的なところですね。
また、お供えしてからお下がりを頂くもよし、お月見料理として、枝豆を頂くという風習も御座います。
ススキをお供えするのも、稲穂に模したという意味も御座いまして、中秋の名月にお供えする食べ物には、それぞれ意味があるのです。
食べ物への感謝をする機会としても、私はこの中秋の名月に食べ物をお供えするエトス(行為様式・風習)は、大切に継承したいと思う次第であります。
中秋の名月にお供えする食べ物の意味
中秋の名月にお供えをするというエトス(行為様式・風習・儀式)には、豊穣を祈り、収穫の無事を感謝申し上げるという意味が御座います。中秋の名月・十五夜と月、後の月・十三夜の月には、それぞれ食べ物に由来する別名が有る事は、以前もちらりとお伝えした事がありますね。
:中秋の名月(十五夜の月)=芋名月
:後の月(十三夜の月)=栗名月
です。
これは、各々の季節で収穫される、旬の食べ物を見事に表した名月の呼び名であると、私は味わっております。
本当に、舌でも味わうことが御座いますから、二つの意味で味わいを頂いておるわけです。
こうして、中秋の名月と後の月「二夜の月」の風習は、食欲の秋を連想させてくれますが、同時に五穀豊穣の祈りと感謝と言う事で「感謝の秋」とも言えるかも知れません。
また、中秋の名月に、丸い団子をお供えする風習にも意味が御座います。
丸い団子は「月を模している、満月に見立てている」という意味があります。
ただ、丸い団子は満月のお月さんを模しているという意味があるのですが、実は地域によっては月見団子って、真ん丸では無かったり致します。
私が住まわせて頂いておる京都では、中秋の名月の時季が近づくと、里芋を模した月見団子が販売されます。
京都の月見団子は、里芋をもした円錐方の団子に、雲を模して漉し餡がのっかっています。
京都で観られるこの形では、団子に巻かれる餡子が雲を表しております。
その他にも色々と形が御座いまして、月見団子は地域性も観られて、なかなか興味深さも御座います。
私の親戚は静岡県に住んでいるのですが、静岡県では赤血球みたいに真ん中がへっこんでいたり、ドーナツみたいに穴が空いた形の月見団子をお供えする風習があるそうです。
静岡県では「へそもち」という呼び名があり、こちらは餡子をその都度のっけて食べるそうですよ。
「月見団子や団子にみる地域性」という研究テーマは、夏の自由研究のテーマ選定なり課題として、如何でしょうか、と提案してみます。
月見団子や里芋などの食べ物をお供えして、お下がりを頂くという風習・儀式を「直会(なおらい)」と言います。
これは、神と同じ食べ物を頂くという意味が御座いまして、大変有り難く感謝申し上げる儀式であります。
人智及ばぬご縁、そのご縁による恵みに感謝申し上げ、自然に畏怖の念を抱き、それを儀式というエトスは、神を信じる宗教ではない仏教ではありますが、仏教と通じるエトス(精神性)を感じます。
中秋の名月の食べ物を使ったレシピ1:里芋のにっころがし
中秋の名月では、食べ物をお供えする風習についての意味は、上でお伝えした通りです。そして、お供えしたらそれを「後でスタッフが美味しく頂きました」というが如く、お下がりを頂戴しましょう。
お下がりを頂くとき、私は南無阿弥陀仏を十回、十念を称えさせて頂くのですが、それは各々の信仰にお任せ致します。
せめて「感謝して頂きます」と、合掌して感謝の念を表すということはして欲しいと、勝手に思うておりますがね。
中秋の名月に、お月見の室礼をお下がりとして頂く時、里芋をお供えしたら、調理する必要が御座います。
そこで、中秋の名月でお供えした食べ物を調理して食べるためのレシピを、少しばかり伝えさせて頂きます。
一つ目に紹介するレシピは、
:里芋のにっころがし
です。
里芋のにっころがしは、里芋の定番料理ですね。
私は、お節料理に入れて、毎年修正会(正月)の時季にもそもそと頂いております。
では、早速里芋の煮っ転がしレシピに移りましょう。
1:里芋を食べられる分だけ用意して、皮を剥きます。
今回は、500グラムほどの分量でお伝え致しますね。
2:一端、あくとぬめりを取るために3分ほど茹でます。
3:鰹のだし汁1と半カップ、醤油・砂糖・酒を1カップ、塩を少々と一緒に、里芋に味が染みこむまで煮ます。
4:煮る場合は、落としぶたをしておき、一端沸騰してから大体20分程、ことこととゆっくり弱火で煮ます。
これ、京都では「ことこと炊く」という表現を用いる事が御座います。
煮汁が殆ど無くなってきて、ホクホクと柔らかくなったら完成です。
作業手順・レシピそのものは複雑ではないと思いますが、里芋の調理は皮を剥く段階から時間と手間がかかりますから、お時間の余裕がある人は、挑戦されると良いでしょう。

中秋の名月の食べ物を使ったレシピ2:里芋コロッケ
中秋の名月の食べ物を使った料理で、二つ目に紹介するレシピは、里芋コロッケです。丸い形に調えれば、満月に見立てることが出来ますから、なかなか風情のある風流な趣を出せるお月見料理となるのではないでしょうか。
里芋コロッケのレシピは、コロッケを作った事がある人なら、ジャガイモを里芋に変えたものと認識して頂ければ、割とすんなり作れるのではないかと存じます。
1:適量の里芋の皮を剥き、ある程度柔らかくなるまで加熱します。
今回は、里芋4つにします。
この時、電子レンジを使うと簡単にできるそうですよ。
600Wで表裏3分ずつ、合計6分で串や割り箸が通るくらいが目安です。
私は、あく抜きの事もあるから茹でる方法を採ります。
ここのレシピの注意として、あまり柔らかくなりすぎると、形を整える際に難儀しますから、柔らかくなりすぎないように気をつけましょう。
2:一端冷ましてから、里芋を潰して形を整えます。
お好みで葱などの野菜を入れても良いでしょう。
以前お伝えした「サチのお寺ごはん」の、飛龍頭を参考にされると良いかもしれませんね。
参照:「サチのお寺ごはん2巻の読書感想」
飛龍頭は、「サチのお寺ごはん」2巻で紹介されております。
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以上が、里芋コロッケのレシピです。
里芋の煮っ転がしより、レシピとしては簡単な気が致します。

中秋の名月の食べ物を使ったレシピ3:枝豆
中秋の名月では、里芋以外にも、季節の食べ物として枝豆をお供えすることも御座います。地域の気候によって違いますが、枝豆は大体5月頃から10月頃までがシーズンです。
最近は、年中見かけるようになりましたけれども。
枝豆のレシピについて、これも実は「サチのお寺ごはん」をヒントにしました。
参照:「サチのお寺ごはんの感想」
「サチのお寺ごはん1巻」では、空豆を七輪でじっくり焼いて食べる、という話が御座います。
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そうしたら、ありましたよ、枝豆もフライパンで調理出来ます、レシピ御座います。
その名も「焼き枝豆」です、まあ、そのまんまですね。
1:枝豆を皮のまま、ザッと洗って汚れを落とします。
2:適量かお好みの分量の塩を使って、枝豆を皮のまま塩もみし、5分から10分くらい置きます。
3:塩もみした後は一端さっとだけ洗ってザルにあげます。
3:フライパンを用意して、油を使わずに敷き詰めていきます。
この時、重ならないように注意しましょう。
4:表と裏を、それぞれ5分ほど焼いていきます。
火力は、中火と弱火の中間くらい、中火の少し弱めくらいが目安です。
焦げ目が付いて、硬さを確認しながら、お好みの硬さに仕上がれば完成です。
焼き枝豆って、素材の味をそのまま楽しめますし、余計な物を一切使わない、何となく禅的・仏教的な食べ方ですね。
中秋の名月に食べ物をお供えしてお下がりを頂くのは、旬を頂く智慧だと思う
今回は、中秋の名月にお供えする食べ物の意味と、そのレシピをお伝え致しました。私は、中秋の名月に食べ物をお供えするエトス(行為様式・儀式・風習)は、自然への畏怖と、自然への感謝を表していると味わい、頂いております。
それと共に、旬の味を頂けるという意味も見出しております。
旬の食べ物を頂くと言う事は、その食べ物が最も味わい深い時季に頂けるということです。
この事は、お寺での食事、精進料理にも、また会席料理などでも観られる智慧であります。
最も栄養価が高く、味も最高潮である旬の時季に味わいを頂く。
中秋の名月の食べ物をお供えするというエトスから、そのような仏教・禅の智慧を味わう、今日この頃で御座います。
尚、中秋の名月に関連する話は、こちらでも味わって頂く事が出来ます。
参照1:「中秋の名月はいつの日か|2016年版」
参照2:「中秋の名月の由来と意味」
中秋の名月を、共に色々な味わいを共有出来れば、嬉しい一時で御座います。
合掌