有難う御座います、ようこそお参り下さいました、当庵(ブログ)住職の真観です。
前回は「「いただきます」「ごちそうさま」と言わない時代」という表題で、話をさせて頂きました。
食前と食後のご挨拶や、食事の偈というのは、私は美しい日本の文化であり、「いただきます」「ごちそうさま」という日本語自体にも美しさを感じております。
仏教では「綺麗とか醜いといった分別をしない」という教えもありますけれども、直感的・直観的に美しいと感じてしまうものです。
「美しい→だから強制的に広める」というように、推奨する事はあっても強制はしない、というところまでで、念を継がないように留めてはおりますが。
今回は、「いただきます」というこの言葉について、更に深めて行くために、英語表現からも学んでいくことと致します。
英語では「らきすた」で「いただきます」を学んだ
「いただきます」「ごちそうさま」という日本語を英語で表現について。これ、実は私は偶然学ばせて頂いた経験がありまして。
私の友人に、アニメーションが大好きな人がいまして、北米版のDVDやBlu-rayを持っている人がいます。
それで、「らきすた」の北米版を見せて貰ったとき、「こなた」と「みゆき」というキャラクターが
:Thank you for the food.
(食べ物を有難う御座います。)
と、言っていました。
凄く印象的で、尚且つ「綺麗な表現だ!」と直観し、一発でこの表現を記憶したものです。
英語でしたら、「いただきます」の日本語訳をすれば
:Let’s eat.
が一般的だそうです。
でも、「ありがとう」という言葉が入っていることから、私は
:Thank you for the food.(またはThank you for the meel.)
が綺麗な「いただきます」の英語表現だと直観したものです。
やはり、食への感謝の言葉が入っている方が、私としてはしっくりきます。
「ごちそうさま」については「らきすた」では見受けられませんでしたが、英語で表現するなら
:Thank you for the nice meal.
:Thank you so much for the lovely meal.
(素敵な食事を有難う御座います。)
が綺麗だと思います。
食材、食べ物そのものと、関係して下さった色々なご縁への感謝の意は、やはり言葉にしておきたいものです。
「いただきます」も「ごちそうさま」も、食そのものと、それにまつわる全てのご縁に感謝もうしあげる事で御座います。
故に、感謝を表す言葉が入った英語表現が、私は望ましいと味わっておりますし、取り入れていきたい事であると頂いております。
「いただきます」「ごちそうさま」は日本語だけ?英語や海外の事情
「いただきます」「ごちそうさま」という日本語は、漢字変換すると「頂きます」「ご馳走様」です。漢字変換すると、日本語の意味を、より読み取りやすいですね。
そこで、言語的な事を考えていたとき、ふと
「そういえば、海外や英語ではなんて表現するのだろう?」
と、疑問が沸いてきました。
「いただきます」「ごちそうさま」という日本語に該当する英語表現や、海外の言葉ってあるのだろうか、と。
そもそも、食前の言葉を言う文化はあるのだろうか、とも問いを発し、その辺りを探ってみることと致しましょう。
「いただきます」「ごちそうさま」は海外にもあるか?海外の食前と食後の言葉事情
英語版「いただきます」「ごちそうさま」の前に、英語圏以外の海外の食前と食後の言葉事情を紹介致しましょう。どこかで聞きかじった話ですが、中国には日本語の「いただきます」「ごちそうさま」にどんぴしゃりで該当する言葉はないそうです。
中国で「頂きます」に当たるのは「チーファンラ(ご飯を食べます)」で、「ご馳走様」は「チーパオラ(満腹です)」です。
日本語の「いただきます」「ごちそうさま」とは違い、事実を言っているという印象です。
韓国では「チャルモッケスムニダ(よく食べます)」が「いただきます」に該当します。
「ごちそうさま」の日本語に該当するのは「チャルモゴッスムニダ(よく食べました)」です。
これも事実を言っているという感じの言葉ですね。
続いてヨーロッパ。
私は大学時代の第二外国語は、ドイツ語を履修していたのですが、そこで教わった食事の言葉があります。
ドイツ語では「Mahlzeit(食事時間)」が「いただきます」に該当します。
「Danke, hat gut geschmeckt.」もしくは「es hat uns sehr gut geschmeckt.(有難う御座います)」が「ごちそうさま」に該当します。
「Danke」は「ありがとう」という言葉です。
その他にも色々と調べて観ましたが、どんぴしゃりで日本語の「いただきます」「ごちそうさま」が直訳されている海外の言葉はなかなかみつかりません。
やはり、感謝の意を表す「いただきます」「ごちそうさま」という日本語と合掌の文化は、日本独特のものなのですね。

「いただきます」「ごちそうさま」と宗教:宗教的行為様式には食前と食後の祈りがある
英語や海外の言葉で「いただきます」「ごちそうさま」というのは、どんぴしゃりというのはなかなかみつからないものでした。日本語独特とも言えるこの言葉を改めて考えると、宗教的行為様式であり宗教性を帯びている言語であるような、そんな事さえ考えます。
宗教的行為様式と言えば、日本仏教以外にも食前と食後に祈りの言葉を発し、食や神に感謝して食を頂く人達がいらっしゃいます。
最も有名なところでいうと、映画でも観られたアーミッシュの人達の食前と食後の祈りでしょうか。
確か、ハリソン・フォードさん主演の映画で、アーミッシュの食事風景が出て来て、それで日本でも知られるようになったとか。
アーミッシュとは、キリスト教と共同体に忠実で、厳格な規則を守る人達のことです。
電気を使用すること無く、現代においても原始的な生活や自給自足の生活をされている人達ですね。
アーミッシュの人達は、今でも移動手段に馬車を用いていらっしゃるという生活様式を営まれております。
仏教の世界で例えるならば、原始仏教が盛んな国のサンガ(僧伽、僧侶の共同体の事)に当たるでしょうか。
上座部仏教と呼ばれる仏教圏の人は、今でも托鉢をして修行する毎日を送られていて、厳格に仏教の戒を律している人達です。
宗教様式、宗教儀式の守り方の厳格さには、もしかしたら共通する何かがあるやもしれません。
天台宗の僧侶で宗教学者の町田宗鳳さんは、アーミッシュの人達のつぎはぎのキルトを観て「金剛界曼荼羅みたい」と仰ったそうです。
着古した服の端切れを継ぎ合わせたキルトは、現役の僧侶が「僧侶の袈裟みたいだ」と見ても不思議ではありません。
そのような特徴が観られるアーミッシュの人達や、キリスト教徒の方々は、食事の時に祈りを捧げるという行為様式を守られています。
食前には手を組んで「主よ、この食事を祝福してください。」「主よ、わたしたちを祝福し・・・」と、祈りを捧げます。
食後も「主よ、この食事の恵みを、心から感謝します。」と、食と神に感謝して祈りを捧げられます。
食へや天地の恵みに対する感謝の祈りと言葉は、どの宗教にも基本的な宗教的行為様式としてあるようです。
私は、キリスト教・アーミッシュの食事の祈りって、綺麗だなって感じております。
この食事の祈りと言葉は、「いただきます」「ごちそうさま」という日本語と食への感謝の念に通じる、って思ったりしております。
そう考えると、「いただきます」「ごちそうさま」は、言葉自体は短く簡易化されているけれども、中身は凄く濃密な食事の祈りであり、すっきりとして凛とした美しい日本語だなあ、と、改めて思う今日この頃です。
合掌